映画の主題歌がヒットする、あるいは大ヒット曲を映画化するといったメディア・ ミックスは、情報化社会に即したいかにも近年のものといった感じがしますが、実は 日本においては大正時代にさかのぼることのできる由緒正しい(?)ものなのです。大正二年(一九一三)頃から人気を集め、翌一二年に大ヒットとなった『船頭小唄 (枯れ苦)』という流行歌(作詞叩野口雨』慣作曲”中山晋平)。今でも有名な「おれは 河原の枯れすすき同じお前も枯れすすき」で始まるこの名曲は、大正一二年に映画 化され、こちらも大ヒットとなり、主演の栗島すみ子をスターの座に押しあげました。 また、『船頭小唄』に続く大ヒット曲『篭の鳥』(作詞唖千野かほる、作曲皿鳥取春陽) は、各映画会社が競って映画化し、これも大変な人気を呼びました。 こうした既存のヒット曲を映画化したものは「小唄映画」と称されましたが、これ とは逆に映画の制作に際して主題歌が作られるようになったのは昭和に入ってからの ことで、昭和四年(一九二九)に菊池寛の小説『一塁凧行進曲』が日活で映画化される 際に、同社がビクターとタイアップして同名の主題歌(作詞”西条八十、作曲”中山 晋平)を作ったのが第一号でした。